腕っこきなテクニシャンたちによるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番、2種聴き比べ

ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を、ラフマニノフを弾くにひときわ腕っこきなテクニシャン系ピアニストたちによる2種の録音で聴きました。

 

サンチャゴ・ロドリゲス(p)/エミール・タバコフ指揮、ソフィア・フィルハーモニー管弦楽団(ELAN、1989年録音)

 

キューバ出身のロドリゲスはメタリックにバリバリと弾きこなすピアニズムであり、ラフマニノフの演奏ではもってこいの”映え”がある(ついでに言うと、カップリングのプロコフィエフでも映えており、何ならプロコフィエフのほうがより芸風と合っているかもしれない)。録音は若干ドライで、オケの響きもそれ相応に捉えられている為、喩えるなら鳥ささみのようなパサパサ感があるけれども、総じて筋肉質、細マッチョな快演、です。

 

 

ツィモン・バルト(p)/クリストフ・エッシェンバッハ指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(EMI、1989年録音)

 

昨年(2023年)入手した音盤で聴いてみて衝撃を受けた屈指の中の1枚が、バルト/エッシェンバッハによるこちらの録音。バルトのピアノ演奏をこれで初めて聴いたのだけれども、まぁ粘る。そしてネコ科のアニマルのように跳ねる。ここで聴くラフマニノフは「バルトのラフマニノフ」だ。好悪分かれるでしょう、ここまで個性的だと。でも自分は、ラフマニノフの演奏においてこのアプローチは効果的であると思うし、単純に好きですね。そして、そんなバルトとがっぷり四つに組むエッシェンバッハが、また負けず劣らずのお粘り系なものだから。ネバ×ネバのネバーランドですよ。とびきり面白い。

 

ところで偶然ながらいずれも録音年が同じく1989年。東西冷戦最晩期、前者は7月にブルガリアのソフィアにおける録音だから、まだ”鉄のカーテン”がある時代の、東側と西側での記録ということになりますね。

 

同曲異演でこれだけ違った楽しみ方が出来るのだから、クラシックはやめられませぬ。