ケネス・ジーンって知ってる?

この手のコンピレーション盤は今や収穫対象となることはほぼ無いのだけれど、当盤、クレジットを見ると"ケネス・ジーン指揮"の演奏が数曲入っていたので、これは!と思い購入。f:id:hea_day_chiba:20240125094247j:imagef:id:hea_day_chiba:20240125094250j:image

同じ初期NAXOSの録音で、ファリャの作品をメインとしたスペイン音楽集を氏の指揮で聴き、大変感銘を受けていた為。

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今回のラヴェル数曲の演奏も素晴らしく、唸ってしまった。線の細いオケに低廉なデジタル録音といったハンデを超えて浮かび上がってくる指揮の技量とセンスの高さ。

 

グールドによるシベリウス「3つのソナチネ」他

出掛ける機会があると、出先近場のブックオフには何はなくとも足を運ぶようにしているのですが、こちら直近の収穫盤。グールドでシベリウス?珍しいのでは?とグールドにさほど詳しくない私は思い、なんとなく興味もそそられて手を伸ばしたのでした。加えて言えばシベリウスピアノ曲も門外漢な私です。

 

・ピアノの為の3つのソナチネ

・ピアノの為の3つの抒情小品集”キュリッキ”

グレン・グールド(p) 1976,77年録音(CBS)

 

今…厳密には昨年11月末からなのですが、個人的に色々ありまして、心身ともにおおよそ”底”だろうと、いうような状況なのですが、なにげなく入手し、それとなく再生してみたこの音盤、この音楽、そっと心に沁みております。なんと可憐で、優しく、そして深淵を含んでいるのでしょうか…訥々としてある種”記号的”なグールドのピアノがまた、押しつけがましくなくて今の自分にとっては心地よくもあります。素敵な音楽に出会えたことに感謝ですし、こうした邂逅があるのなら、人生、まだ頑張ることを諦めずにやっていけるかもしれないと、思います。下がるところまで下がったら、あとは上がっていくだけです。

 

 

 

”あの感じ”がちょっと苦手な私のニューイヤーコンサート

ウィーン・フィル的な、というか、ニューイヤーコンサート…楽友協会大ホールの煌びやかでゴージャスな雰囲気から演奏されるあの感じ…がちょっと苦手な私でも聴ける、ヨハンの1世だったり2世だったりヨーゼフだったりするシュトラウスの、ワルツだったりポルカだったりのアルバムを2枚ご紹介。

 

ロベルト・シュトルツ指揮、ウィーン交響楽団(AMADEO原盤、1963年録音)

録音の古びた感じも起因してか?”鄙び感”があってこれが”味”。シュトラウス一族の音楽とは、ローカル性、田舎っぽさ*1と見つけたり!…なんて、この演奏を聴いていると思ってしまう(ワルツの三拍子も、バルで貴族がというよりも広場で大衆が、なズンチャッチャぶり)。ウィーン・フィルのニューイヤー的なあの感じとはかなり距離あり(だから個人的に好きなのだと思う)。

 

フリッツ・ライナー指揮、シカゴ交響楽団RCA、1957,1960年録音)
こちらも年代の古い、こじんまりとしたステレオ録音だけれども、相応の音質的制約の中でとてもシンフォニックな演奏が記録されています。さっぱりとしたテンポで節度ある優美さを表現、ショルティ時代とは異なった顔つきのシカゴ響黄金時代を堪能出来ます。これもまた今様のムジークフェライン's ニューイヤーとは違うシュトラウスですね。

 

こちらを書くにあたり上記の2枚を改めて聴き通しておりました。

これを持ちまして私の2024ニューイヤーコンサート、お開きでございます。

ダンケシェーン。

 

 

*1:いい意味で!

隠れた秀演、リーベルマン/北オランダ管によるベートーヴェン

ベートーヴェン交響曲第5番を、ヴィクトル・リーベルマン指揮、北オランダ管弦楽団の演奏で。

 

いわゆるメジャーどころではない録音(これはオケの自主レーベルなのかな?スポンサーにはエリクソンをはじめ数社のクレジットが)、そしてオケも指揮者も、この盤を入手してから調べてみて初めて知るに至った次第でしたが、なかなかどうして、実に立派な演奏で驚きました。隅々までオケをよく鳴らしモダン編成の長所を味わわせてくれながら、主に前半は小気味よく、後半(特に終楽章)にはそこに恰幅が加わり堂々の終着。指揮者の手腕に感服、ヴィクトル・リーベルマンとは何者…?と調べてみたら、1931年ロシア生まれで、ムラヴィンスキー治下のレニングラード・フィルで長らくヴァイオリン奏者として在団、1979年にオランダへ移住、1999年に没するまで同地で奏者として指揮者として、そして教育者としても活動したのだそう。己が個性でオケを染め上げるタイプの指揮者ではなく、オケを上手にまとめ、豊かに鳴らし、そうして自然と音楽(作品)を輝かせる、そんなタイプとお見受けしました。

Viktor Liberman - Wikipedia

カップリングの「コリオラン」序曲、「エグモント」序曲も共に素晴らしいです(交響曲よりも演奏のコンディションは少し優るかも)。

 

「いやぁ、良い演奏を聴いた」と、充実の聴後感に浸れる一枚でした。

 

 

 

腕っこきなテクニシャンたちによるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番、2種聴き比べ

ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を、ラフマニノフを弾くにひときわ腕っこきなテクニシャン系ピアニストたちによる2種の録音で聴きました。

 

サンチャゴ・ロドリゲス(p)/エミール・タバコフ指揮、ソフィア・フィルハーモニー管弦楽団(ELAN、1989年録音)

 

キューバ出身のロドリゲスはメタリックにバリバリと弾きこなすピアニズムであり、ラフマニノフの演奏ではもってこいの”映え”がある(ついでに言うと、カップリングのプロコフィエフでも映えており、何ならプロコフィエフのほうがより芸風と合っているかもしれない)。録音は若干ドライで、オケの響きもそれ相応に捉えられている為、喩えるなら鳥ささみのようなパサパサ感があるけれども、総じて筋肉質、細マッチョな快演、です。

 

 

ツィモン・バルト(p)/クリストフ・エッシェンバッハ指揮、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(EMI、1989年録音)

 

昨年(2023年)入手した音盤で聴いてみて衝撃を受けた屈指の中の1枚が、バルト/エッシェンバッハによるこちらの録音。バルトのピアノ演奏をこれで初めて聴いたのだけれども、まぁ粘る。そしてネコ科のアニマルのように跳ねる。ここで聴くラフマニノフは「バルトのラフマニノフ」だ。好悪分かれるでしょう、ここまで個性的だと。でも自分は、ラフマニノフの演奏においてこのアプローチは効果的であると思うし、単純に好きですね。そして、そんなバルトとがっぷり四つに組むエッシェンバッハが、また負けず劣らずのお粘り系なものだから。ネバ×ネバのネバーランドですよ。とびきり面白い。

 

ところで偶然ながらいずれも録音年が同じく1989年。東西冷戦最晩期、前者は7月にブルガリアのソフィアにおける録音だから、まだ”鉄のカーテン”がある時代の、東側と西側での記録ということになりますね。

 

同曲異演でこれだけ違った楽しみ方が出来るのだから、クラシックはやめられませぬ。